Toyosu Tekko Visions - 築地〈Sud Swap〉

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3年後に迫った東京オリンピックの栄華の裏で、混迷を極める築地市場豊洲移転問題。土壌の汚染や建物の欠陥、ひいてはゼネコン問題や都政への不信などにも議論が波及している。この一連の事柄はわたしたちの食生活ばかりか、日々の暮らしにも直結する深刻な事態であろう。さて、この諸々の問題に関して非常にセンセーショナルな作品が、Vaporwave文脈から発信された。Toyosu Tekko Visionsによる「築地」というアルバムである。

Toyosu Tekko Visionsとは何者なのか、それに関しては本人の意向を汲んで明言を避けようと思うが「築地」を発表するために現れた名義であるのは間違いない。

本作は、築地市場豊洲移転問題を巡って繰り広げられる一連の不毛な騒動を体現したかのような、それを眺める市場関係者や我々消費者たちの心情を代弁するかのような、陰鬱なサウンドスケープが展開されていく。楽曲に耳を傾けていると、競りの掛け声や、それによって生じる人工的な物音など、魚市場の活気を耳にすることだろう。そこには、Toyosu Tekko Visions本人が築地を訪れた際に録音したフィールドレコーディングサウンドが込められている。市場の営み、そこへ仄暗い影を落とすかのような、ドローンサウンドが覆いかぶさっていく #1 "cyanogen”(シアン)から幕を開けるこのアルバムには、豊洲移転市場の地下水から検出された元素が並ぶ。#4 "arsenic”(ヒ素)、#6 "hexavalent chromium”(六価クロム)、#8 "benzene”(ベンゼン)……。また #3 "104​-​0045 (feat. TOOKYO2020 & Θ)” における"104​-​0045”という数字の羅列は、"東京都 中央区 築地” の郵便番号を示しており、Toyosu Tekko Visionsが築地という土地に強い思い入れを持っていることが窺い知れる。この作品に込められた想いを、インタビューと共に紐解いていこう。

◆「築地」を取り巻く背景〈 "Food Critic Network” について〉

本作は、La Mano Friaの主宰するレーベル〈Sud Swap〉からリリースされた。オーナーであるカリフォルニアはマイアミ在住のLa Mano Friaは、90年代後半からDIY精神に則ったグラフィックデザインや、レーベル運営などの活動に従事してきた人物である。インディペンデント・シーンでキャリアを積んだのち、2016年にVaporwaveにフォーカスをあてた〈Sud Swap〉を設立。そのサブレーベル〈Botanica1〉、日本の〈Seikomart〉と共に、Vaporwaveシーンに立脚した表現活動を展開している。その詳細については、MASSAGEに掲載されたこちらの記事に詳しく記されているので、ぜひご一読願いたい。

4月の初め頃、国境を超えたそれらの3つのレーベルが提携し "Food Critic Network” というプロジェクトが始動した。"Food Critic Network” は、食品のグローバル化に対する批評という名目のプロジェクトである。食べ物という最も普遍的なテーマに着目したプログラムのようで、そこに含まれる作品群は "#dreamkitchen” というタグで関連付けされている。"Food Critic Network” を計画した経緯について〈Sud Swap〉にコンタクトを取ったところ、レーベル側は、とあるYoutube動画へのリンクを添えてこのように語った。

We liked the concept and our labels now and before deploy these type of projects when they come up. Food being the most universal theme, we all eat. Food Critic Network is a simple critique on globalization, the "elite" humans finding the forever need to "explore" "discover" and collect souvenir/trophies from other human cultures, glorified in these cable channels and programs. Sanitized tv shows bringing you a fantasized "world". (sanitized just means "cleaned" everything is censored and controlled... TV) Here in Miami we're immigrants of some of these places these locations, and are amused by these shows. because it looks like a joke or fantasy for us.... they travel to India, Colombia, Brazil... to meet the people and culture..and eat their food.in a 20 minute tv show.. everything is safe and fun for the traveler/explorer...like a school text book....... they don't show any real problems and situations... nothing deep...Best way to explain anything is through music

僕たちはコンセプトとレーベルが好きだったから、現在も過去にもこのようなプロジェクトを展開することにしている。食べ物は最も普遍的なテーマで、僕たちは食べなくてはならないだろう。そうしてみると "Food Critic Network” はグローバル化に対する単純な批評だ。いわゆる"エリート”の人間は、異なった人間の文化を "探検” し "捜し当て” 、それから、お土産を収集する必要性をいつまでも感じていて、見つかる勝利品をケーブルテレビ局のテレビ番組とかで美化してしまう。すべてが検閲され、制御された衛生的なテレビ番組は、幻想的な世界をもたらしている。僕たちはマイアミ市に住んでる移住者だから、そんな番組を面白がっている。なぜなら、僕たちにはそれが冗談や空想みたいに見えるからだ。番組で彼らはインド、コロンビア、ブラジルを旅する。人々と文化に出会い、彼らの食べ物を食べる。たった20分のテレビ番組で…。旅行しているプレゼンターのための全てが安全で楽しい…、教科書みたいに…。彼らは現実的な問題や状況を見せない…。深みがない…。何かを説明する際の最善の方法は、音楽を通すことだ。

このプロジェクトの背景には、グローバリゼーションやアメリカの社会階級や地域格差など複雑な事情が渦巻いているようだ。検閲・制御のプロセスを経て、都合の悪い部分が包み隠され、潔癖なほど衛生的に保たれた上流人士のためのテレビ番組。テレビが垂れ流す幻想に中指を突き立て、音楽こそ最高の説明方法だと自信たっぷりに語る彼らは、テレビショーを模した音楽プロジェクト "Food Critic Network” を企てる。彼らが紡ぎ出すのは、その土地に根差した暮らしのなかで生まれる、虚飾や誇張のないまっさらな音色だ。

さて、"Food Critic Network”を構成するプログラムについて紹介していこう。日本のレーベル〈Seikomart〉からは、ニューヨークのアストリア地区に住むバーテンダー講師、ミクソロジストである[_]の「░ (Season 1)」がオンエアされた。ペルーの国民的なカクテル、ピスコサワーを添えたラグジュアリーなアートワークが、週末の華やいだ夜を彩るような一品。もしかすると、これもテレビ番組がもたらした幻想なのだろうか?

マイアミのレーベル〈Botanica1〉からは、同じくニューヨークはジャクソンハイツ地区に住む料理講師、Θによる「ਕਰੀ (Season 1 & 2)」がオンエアされた。住民のほぼ半数近くが移民であり、様々な人種がひしめき合うジャクソンハイツ地区は、人種の坩堝とも評されている。ヒスパニックとインド人が大半を占めているようで、インド料理街が形成されるほどインド料理が盛んなようだ。表題の「ਕਰੀ」はパンジャーブ語でカレーを意味する。Mallsoftのようなくぐもった音響加工のなか、エスニックなパーカッションが鳴り響く一品。

これらの作品群を経たのち、改めて "Food Critic Network” の最終プログラム、Toyosu Tekko Visionsの「築地」へチャンネルを合わせてみよう。2つのシーズンでは食品そのものをフォーカスしたプログラムが展開されていたが、Toyosu Tekko Visionsの「築地」では食品の流通という視点から市場に目が向けられている。なぜ、日本の築地市場の問題を取り扱ったのか?Toyosu Tekko Visions(の中の人)に尋ねてみたところ、彼はこのように語る。

The 2 projects based in Queens is because of the gentrification of an area where few of us personally grew up in and now its the "trendy hipster culinary center of the world"... Θ which is pronounced "dish" & [_] is pronounced "bar" by the way, starts in what was once a Colombian neighborhood, then formed into little India in the 90's...thats why "curry"... and now Astoria is now the cool and safe place hipsters (and alot of Japanese) who want to "work and play" in the high NYC but not live in the city, so live across the bridge in convient Astoria .they move in.and cause the price of the property and rent to go up... forcing local and native people out. Gentrification. Therefore destroying the very culture they moved there to enjoy.

2つのプロジェクト([_]の「░ (Season 1)」とΘの「ਕਰੀ (Season 1 & 2))は、僕たちの中でクイーンズ区で育った人がいると言う理由に基づいて、この背景を選んだ。この頃、クイーンズ区は下層住宅地の高級化によって「流行りのヒップスターと料理の中心地」になってしまった。ところで、「Θ」は「ディッシュ」の発音で、「_」は「バー」の発音だ。アストリアは昔からコロンビア人が多い地域だった。90年代の頃に、「リトル・インド」になった。それだから「カレー(ਕਰੀ)」という題名を付けた。現在のアストリアは、クールで治安の良い場所になっている。ニューヨークで遊びながら仕事しているヒップスターたちが、橋の裏側にある便利なアストリアに住む (日本人も多い)。こんなに人口が進出すると、地価と家賃の値段が増加し、もともと住んでいた人が追い払われる。高級化だ。したがって、彼らはまさしく文化を破壊し、楽しむためにそこに移動した。

 

Last season has more to do with even more ridiculous about culture and people. First you have a have a fake mini suburb island created for upper mid class families in Toyosu with a shopping mall, parks near the water, etc... full of people and kids playing, in a known toxic area, thanks to tokyo gas. I spent time there and photographed the images used myself. Then to add to the stupidity, they want to move (in a rush because the olympics) Japan's most famous tourist fish market to this toxic area. our main concern was with the the local people, who not only will now eat toxic fish but will play and live in a toxic place. This is the US is called Brownfield land. Why did we pick these places.. again these are places we've been, live or lived in.

最後のシーズン(Toyosu Tekko Visionsの「築地」)はもっとばかげた人と文化についてだ。まず、富裕層向きの偽造した島(豊洲)が、ショッピングモールや水辺の公園などとともに郊外に作られた。東京ガスのおかげで、有毒な場所として知られているこの場所では、たくさんの子供たちが遊んでいる。そこに自分自身で写真を取りながら時間を過ごすことがあった。さらに愚かさは増して、日本の最も有名な魚市場は(オリンピックのために急いで)この有毒な場所に引っ越したいと思っている。僕たちが主に懸念することは、有毒な魚を食べるだけでなく、今や毒性のある場所で遊んで生きている地元の人だ。アメリカではこんなところは「brownfield land」と呼ばれているんだ。どうしてこんなところを選んだの?僕たちはこれら(クイーンズ、アストリア、豊洲)に行ったことがあるし、今住んでいる場所でもあるし、また、住んでいたことのある場所だ。

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Photo by Toyosu Tekko Visions

"Food Critic Network” に属する作品群は、Vaporwaveという一言で済ますことができないほどの多様なテーマを孕んでいる。近年〈ANTIFUR〉や〈H.V.R.F. CENTRAL COMMAND〉が提唱する、懐古主義的な思想に抗った"Hardvapour” が頭角を現しているように、〈Lost Angles〉が反トランプ政権を掲げるコンピレーションプロジェクト "Fire Wall" を計画しているように、"Food Critic Network” も、そういった現実主義的な潮流のうちのひとつとして数えることができそうだ。インターネット上に蒸気のように立ち込めるVaporwaveという虚構は、姿形を多様に変化させながら、確実に、我々の暮らす現実世界へと漂い始めているのかも知れない。

◆終わりに

Toyosu Tekko Visions(の中の人)はVaporwaveを愛しているのだと語った。

life is all irony... thats why vaporwave is the only real soundtrack to life...

彼と多くの言葉を交わした。Vaporwaveのこと、新たなプロジェクトのこと、マイアミでの暮らし、日々のこと、東京の鉄道網のこと、そして、豊洲築地市場について危惧しているということ。彼に、わたしたちに訴えたいことはないかと尋ねた。返ってきた返答をこの記事の結びの言葉にしようと思う。

yeah... fuck TEPCO, JOC (Japanese Olympic Committee), IOC (International Olympic Committee), Tokyo Gas, all the liar politicains and all the big companies making money from the development and marketing of this "Toyosu". People in Japan have suffered long enough, and money doesn't matter more than human lives and a child's health and future.

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Photo by Toyosu Tekko Visions

 

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