猫 シ Corp. - NEWS AT 11

 

ブラウン管の向こうにはためく気高き星条旗、「NEWS AT 11(11日のニュース)」なる表題。9月11日を迎えるに併せてリリースされた猫 シ Corp.の最新作、そのビジュアルは何時になく緊迫感を帯びているようにも見えた。「きっとこの作品は、Vaporwaveというミーム的な観点から、15年前の『あの日』を描出した作品に違いない」。期待を胸に再生ボタンをクリックしてみたものの、「反戦」や「祈り」など平和を願う想いとはかけ離れた気だるいミューザックが流れ出し、拍子抜けしてしまった。この無意味さこそがVaporwaveの醍醐味であろう。ならば、なぜ国を揺るがす脅威をモチーフとする必要があったのだろうか。

「NEWS AT 11」は報道番組をテーマとしたアルバムである。収録された楽曲たちは、それぞれ金融や交通、気象情報といったトピックスの名を冠している。それらはチャンネルが切り替わるかのように突如としてぶつ切られ、次の曲、次の曲へと転換していく。情報の消費を体現したかのような何の変哲もないVaporwaveだ。だが、この言い知れぬ不安定さは何なのだろう。前述のとおり、今作は国を揺るがす重大な有事をコンセプトとして掲げている。にもかかわらず、作中では危機の片鱗すらうかがわせないほどに、惰気に満ちた平穏な一日が繰り広げられているのだ。もちろん、非常事態を宣言する曲目は存在しない。発生するはずの有事が起きないまま、やがて「NEWS AT 11」は何事もなく日没を迎えるのだが、日常と非日常、その隔たりに佇む違和感は拭えぬままだ。

ふと「あんな出来事さえ無ければ、このような平穏な日々が続いていたのだろうか」と思いハッとした。武力攻撃というテーマを提示しながらも、あえて表現として用いなかった本作は、逆説的に、当たり前に訪れる日常の尊さを訴えかけていたのではなかろうか。サンプリングフレーズが単調なループを繰り返すVaporwaveの機構のように、穏やかな毎日が繰り返されていく。そんなささやかな風景こそ真の平和と呼ぶに相応しい。きっとこの作品は、Vaporwaveというミーム的な観点から、15年前の『あの日』を描出した傑作に違いない。